こんにちは。ビデオリサーチのハコタニです。
IT部署に異動してから、まもなく1年が経とうとしています。異動当初は、これまで耳にしたことはあっても、正直よく分かっていなかった用語や仕組みに日々向き合いながら、試行錯誤の連続でした。そんな中、業務で「VPC」に関わる機会があり、今回はVPCについて解説していこうと思います。
そこで今回は、IT部署に配属されたばかりの方や、インフラ専業ではない方に向けて、「VPCとは何か」「なぜクラウドで重要なのか」を、初心者目線で整理してみたいと思います。技術的な細かい設定よりも、考え方や役割の理解を重視して解説します。
- 1. VPCとは何か?
- 2. なぜ「Private」が重要なのか
- 3. VPCで何ができるのか
- 4. VPCを構成する主な要素
- 5. なぜ業務システムでVPCが重要なのか
- 6. 実際に自身が関わった業務のご紹介
- 7. まとめ
1. VPCとは何か?
1-1. 一言で表現すると
VPCとは Virtual Private Cloud(仮想プライベートクラウド) の略です。一言で表すと、クラウド上に作る「自分たち専用のネットワーク空間」です。AWSやGCPといったクラウドサービスは、多くの利用者が同じ基盤を共有しています。その中で、自分たちのシステムを安全に動かすために、論理的に区切られたネットワークとして用意されるのがVPCです。
1-2. クラウド全体とVPCの関係
イメージとしては、クラウド全体が巨大なビルで、VPCはその中に用意された自分たち専用のフロアのようなものだと考えると分かりやすいと思います。同じビルの中に他の会社が入っていたとしても、フロアが分かれていれば勝手に行き来することはできません。
VPCも同様に、他の利用者とは論理的に分離されており、自分たちのシステムだけが存在する空間として扱われます。
1-3. 各クラウドにおけるVPCの位置づけ
ここまで説明してきたVPCは、特定のクラウドサービスに依存した概念ではありません。「クラウド上に安全に分離されたネットワーク空間を作る」という考え方は、主要なクラウドプロバイダー(AWS・Azure・Google Cloud などのクラウド事業者)に共通しています。
ただし、各クラウドはこの考え方を、それぞれの設計思想に沿った形で実装しています。そのため、名称やネットワークのスコープ(VPCがどの範囲まで有効かという単位)、サブネット(VPCの中を用途ごとに分けたネットワーク区画)の扱い方には違いがあります。代表的なクラウドにおけるVPC相当のサービスを整理すると、次のようになります。

AWSやAzureでは、VPC(VNet)はリージョン(クラウド事業者が提供する地理的な拠点単位)ごとに作成されるため、リージョンをまたぐ場合は、別のVPC同士を接続する設計になります。
一方、Google CloudではVPCがグローバルなリソース(リージョンに依存せず全体で利用できる単位)として扱われており、1つのVPCの中に複数リージョンのサブネットを配置できます。
こうした違いはありますが、「どこまでを自分たちのネットワークとするかを定義し、その中で通信を制御する」というVPCの役割自体は、どのクラウドでも共通です。
2. なぜ「Private」が重要なのか
VPCの名前に含まれる「Private」は、非常に重要なポイントです。VPCの中は、他の利用者から見えず、勝手に外部からアクセスされることはありません。つまりVPCは、「誰が」「どこから」「どこへ」通信してよいのかを、自分たちで制御できる状態を作るための仕組みだと言えます。
業務システムでは、顧客情報や売上データ、社内向けの機密情報など、外部に漏れてはいけない情報を扱います。そのため、最初から「安全であること」を前提にネットワークを設計する必要があります。
VPCは、こうした業務システムに求められるセキュリティ要件を満たすための土台として機能します。
2-1. VPNとの違い
VPCとあわせてよく登場する用語に「VPN」があります。名前が似ているため混同されがちですが、VPCとVPNは役割がまったく異なります。
VPCは、クラウド上に作るネットワークそのもの(空間)です。サーバやデータベースを配置し、「どこまでを自分たちのネットワークとするか」「どの範囲で通信を許可するか」といった前提を決める役割を担います。
一方、VPNは既に存在するネットワーク同士を安全につなぐための通信経路(通路)です。インターネット上に暗号化されたトンネルを作り、離れた場所からでも安全にアクセスできるようにします。イメージとしては、VPCが「建物や部屋そのもの」だとするとVPNは「その部屋に安全に入るための専用通路」のような関係です。
実際の業務では、「クラウド上にVPCを作り、社内ネットワークや自宅PCからVPNで接続する」といった形で、VPCとVPNを組み合わせて使うケースもあります。そのようなケースでは、VPCはネットワークの土台、VPNはその土台につながる手段と考えると、両者の違いが整理しやすくなります。
3. VPCで何ができるのか
3-1. VPCでできることの全体像
VPCを正しく構築することで、主に次のようなことが可能になります。
- サーバやデータベースを安全なネットワーク内に配置する
- インターネットに公開する・しないを制御する
- 社内ネットワークや外部サービスと安全に接続する
クラウドでシステムを構築する際、VPCはほぼ必ず最初に設計する要素のひとつです。

3-2. なぜ最初に設計が必要なのか
VPCは、後から構成を大きく変更しようとすると、影響範囲が広くなりがちです。そのため、「まずVPCをどう作るか」を決めてから、その上にサーバやデータベースを配置していく、という流れになります。
4. VPCを構成する主な要素
VPCはいくつかの要素が役割分担することで成り立っています。
ここでは、初心者が最低限押さえておくと理解しやすいものを紹介します。
4-1. 構成要素
サブネット
サブネットは、VPCの中を用途ごとに区切ったネットワークです。例えば、Web用、データベース用といった形で分けて使います。ルートテーブル
ルートテーブルは、通信の行き先を決めるルールをまとめた表です。各サブネットは必ず1つのルートテーブルに紐づいており、その内容に従って通信経路が決まります。インターネットゲートウェイ / NAT
インターネットとの通信を行うための出入口です。ルートテーブルにインターネットへの経路が設定されている場合のみ、VPC内の構成要素は外部と通信できます。セキュリティグループ
セキュリティグループは、通信を制御する門番のような存在です。許可された通信のみを通し、それ以外は遮断します。
VPCのネットワークは、
「どこに置くか(サブネット)」
「どこへ行けるか(ルートテーブル)」
「外とつながる出口(ゲートウェイ)」
「最後に通すかどうか(セキュリティグループ)」
という役割分担で成り立っています。
5. なぜ業務システムでVPCが重要なのか
5-1. 業務システムで求められていること
業務システムでは、データの機密性や安定稼働、障害時の切り分けのしやすさが強く求められます。加えて、「誰がどこまでアクセスできるのか」を明確にし、運用や監査の観点からも説明できる構成であることが重要になります。そのため、単にシステムが動けばよいのではなく、長期的に安全かつ安定して運用できる前提が求められます。
5-2. VPCでどう解決するのか
VPCを適切に設計することで、不要なアクセスを防ぎ、システム構成を整理できます。例えば、顧客情報を扱うシステムをインターネットから誰でも直接アクセスできる場所に置いてしまうと、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。VPCを使ってネットワークを分離し、通信経路を必要最小限に制御することで、業務に必要な人やシステムだけがアクセスできる環境を作ることができます。
6. 実際に自身が関わった業務のご紹介
最後に私が業務で行った内容をご紹介します。あるシステムで、これまで複数のVPC間の接続には踏み台サーバー(中継役となるサーバ)を経由する構成を採用していましたが、運用負荷やセキュリティ面の課題がありました。
そこで、踏み台サーバを介さず、VPCピアリングという方法でVPC同士を直接接続する構成へ変更しました。
この対応により、接続経路がシンプルになり、不要なサーバ管理を減らすとともに、通信の見通しと運用性を向上させることができました。あくまでも一例になりますが、このようにVPCを適切に設計することで、日々の運用や管理もしやすい構成にすることができます。


7. まとめ
VPCは、クラウド上でシステムを安全に動かすための基盤となるネットワークです。難しく見えがちですが、考え方は社内LANやオンプレミスのネットワークと大きく変わりません。
初学者の方も、「VPCはクラウド上の自分たち専用ネットワーク」というイメージから少しずつ理解を深めていければよいと思います。